仕事力に差がつく大人になってからの「勉強法」--10の心得 -


仕事力に差がつく大人になってからの「勉強法」--10の心得 - ZDNet Japan
http://japan.zdnet.com/sp/feature/07tenthings/story/0,3800082984,20418775,00.htm

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#1:手付かずの分野を上下挟み撃ちで攻める
#2:「調べる・書く・話す」のサイクルを作る
#3:「ベストセラー」より「ロングセラー」
#4:集中と分散でメリハリをつける
#5:重要な情報源として人の力を借りる
#6:尊敬できる人の言葉は「結論」より「思考プロセス」に注目する
#7:「知ったかぶり」より「知らないかぶり」
#8:同じ失敗を繰り返さない
#9:「4つのスイッチ」を使い分けて脳に弾みをつける
  Body(身体)   カラダを動かす
  Experience(経験)いつもと違うことをする
  Reward(報酬)  ご褒美を与える
  Ideomotion(観念運動)なりきる
#10:振り返りのための時間を確保する

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勉強の目的は人それぞれ。それは、問題解決のためだったり、目標実現のためだったりする。仕事の中で、あるいは仕事以外の日常の中で、どのように勉強するかで「仕事力」にも差がついてくる。本稿では、筆者の体験も含め、大人になってから勉強するときの心構えついて考えてみる。
富永恭子(ロビンソン)2010年8月24日 12時00分


 世の中、勉強会流行りだ。そこに集う人たちは、何かを見つけ、自分をさらに高めようと活動しているのだろう。勉強は問題解決のためであり、目標実現のためであったりする。学生の時以上に、社会に出てからの勉強は自己実現を目指す上でも大切だ。仕事の中で、あるいは仕事以外の日常の中で、どのように勉強するかで「仕事力」にも差がついてくる。そしてそれは、長い時間をかけて生き方の差にもつながっていくのだと思う。そこで、本稿では、体験も含めて、大人になってから勉強するときの心構えついて考えてみた。


★1:手付かずの分野を上下挟み撃ちで攻める


 いままで踏み込んだことのない分野や手付かずの分野の場合、勉強するといっても、あまりにも範囲が広すぎて、どこから何を始めればいいのか分からないし、時間もない。そんなときは、その分野を上下挟み撃ちで攻める方法がある。


 まず、初心者レベルの本や記事を斜め読みしてテーマの全体像をイメージする。いわば「瀬踏み」して、自分が渡るべき川の流れや深さを測り、どこから攻めていくかを判断するわけだ。自分が何を集中的に学ぶべきか分かったら、次に、できればオリジナルに近い理論の提唱者が直接書いた論文などを読んだり、本人の話を聞いたりする。勉強したいターゲットを絞り、その上流と下流両方から攻めることで、効率的に目標とする分野の知識を得られるはずだ。


 私は昔、それまで苦手だった政治と経済を短期間で勉強しなければならなくなって、途方に暮れた経験がある。そこで、まず手始めに新聞の政治経済面を読みまくることにした。朝、1時間早く出社して、会社が購入している新聞5紙全部に目を通す。時間が限られているから、一所懸命、速く読む。それでも間に合わない時は、見出しだけでも読む。それを毎日繰り返した。読む速度は日々早まり、複数紙に目を通すことで、その日のニュースの注目度がレベル別に把握できるようになった。一方で、勉強会や研究会に参加して、学者や専門家の話を聞いた。一見、「手当たり次第」な方法に思えるが、最初はチンプンカンプンだったことも、メディア情報と合わせていくことで、3カ月もすると話の内容が自然と理解できるようになった。以来、短期間での知識習得には、この方法を使っている。


★2:「調べる・書く・話す」のサイクルを作る


 勉強で肝心なのは、知識のインプットと合わせて「アウトプット」も並行して行うことだ。これは、勉強の過程で本を読んだり、セミナーを聞いたり、調べたりして知り得た知識を、文章に書いたり、人に話したりすることで、自分が本当に理解できているかを確認するためだ。スムースに書いたり話したりできなければ理解していないということになる。それに、書くことや話すことによって、情報を整理できるし、自分の盲点も明確になる。そうしたら、ふたたび調査と学習に戻って、足りない部分を補っていく。


 使わない知識は身に付かない。学んで使うことの繰り返しこそが、知識を高めるには効果的だ。このサイクルを作ることによって、学習効果のスパイラルは上昇していく。


★3:「ベストセラー」より「ロングセラー」


 これは、多くの人たちが異口同音で言うことでもあるから、確かに効果的なのだろう。勉強のための本選びに迷ったら、「ベストセラー」より「ロングセラー」を選ぶ。しかも、たくさん読むことだという。


 ロングセラーは、多くの人たちによってふるいにかけられ、結果として時間を超えて支持され生き残ってきたものであり、根本的な概論を示す「普遍的良書」ということでもある。これをより多く取り込むことで、自分の基礎力を増強できるというわけだ。


 また、ロングセラーの本の中でも、優れた書き手とされる人の代表作を一通り押さえるのも効果的だ。書き手の思考をまるごと盗むくらいの心構えで読んでやろう。読みつづけていけば、やがて読んだ本の内容が繋がっていく。自分の中に情報のネットワークが生まれることによって、知識はさらに深まっていくはずだ。


★4:集中と分散でメリハリをつける


 例えば「アイデアに詰まる」といった状態とは、集中しすぎて「脳が揺らがなくなっている状態」だという。同様に「勉強」も続けていくうちにのめり込みすぎて煮詰まることがある。そんなときは、「脳が揺らいでいる状態」にすることが必要になる。脳が揺らいでいる状態は気が散っている状態に近いという。つまり意識が分散している状態だ。この集中と分散の間を「振り子」のように行き来することによってメリハリをつけることで、学習効率がアップする。


 また、睡眠は勉強にとってとても重要だ。睡眠不足は「記憶の定着」にひびくという。コンピュータでは、情報集めとハードディスクへの保存がほぼ同時に行える。しかし、どうやら脳はそれができないようだ。脳の場合、「まず集めておいて、あとで保存する」というプロセスを交互に行う。この「あとで保存する」時間というのが、意識の覚醒レベルが低い睡眠中だという。


 しかも睡眠は、ただ、記憶を定着させるだけではなく、「こなれた記憶」に「消化」する役割も果たすというのだ。人間の記憶というものは、そのままでは意味がなく、一度「消化」しないとダメらしい。長時間ぶっ続けや徹夜での勉強に、思うほどの効果はないようだ。


★5:重要な情報源として人の力を借りる


 自分ひとりで思いつくことには限界がある。勉強も然りで、ひとりで黙々と続けていると、ときに成果が見えないまま、勉強のための勉強を続ける「タコツボ」にはまった状態になってしまう。


 知識を自分のものにするためには、重要な情報源として周囲の人々の力を借りるべきだ。そのためには、あえて自分の思考を未完成な状態で周囲にリリースしてみるといい。ときには、否定的な反応や意見も返ってくるだろう。しかし、ヘコタレてはいけない。学んだことについて周囲と意見を交換することで、さらに理解が深まったり、次の目標が見えたりもする。


 本当に価値のある情報はメディアでは見つからない。会社に埋没せずに外で人脈を作ることもさらに広く情報を収集する意味で重要だ。


 個人的には、1つのアイデアを最低3人に話すことで、それは磨かれて自分のものになると考えている。しかも、話している途中で新しいアイデアが見つかるという、予想外のメリットが享受できることもしばしばある。


★6:尊敬できる人の言葉は「結論」より「思考プロセス」に注目する


 尊敬できて、後に続きたいと思える上司や先輩たちといっしょに働けることは幸せだ。なぜなら、彼らのノウハウをあますことなく吸収できるからだ。ときどき、仕事先で出会う人の中には、彼の上司や先輩と仕草や話し方までそっくりな人がいて驚くことがある。毎日、コミュニケーションを取りながらあらゆる行動を観察し、物の見方、考え方を学んでいるうちに、どんどん似ていったのだろう。だから私は、そんな自分にそっくりの部下を持つ上司は、仕事の上で信用してもいいのではないかとさえ思っている。


 そうした尊敬できる人物から「学ぶ」という意味で最も参考になるのは、自分にとって困ったことを相手に相談した時だ。そのときは結論もさることながら、相手が自分に対して「何を質問し、何を基準に判断したか」に注目するべきだろう。「思考のプロセス」は、物事を考えたり、答えを導き出す上で最も重要だからだ。


★7:「知ったかぶり」より「知らないかぶり」


 学ぶ過程の中で、一番じゃまになるのは「プライド」だ。「聞くは一時(いっとき)の恥、聞かぬは一生の恥」のことわざどおり、知ったかぶりは、知らないことより恥ずかしい。しかも、せっかくの「知る機会」を自ら潰してしまうことになる。


 「その話はだいたい知っている」と思っても、よほどの専門家でもない限り、少しくらいかじっているのは、知っているうちに入らないと割りきって、背伸びすることをやめ、堂々と「知らないかぶり」をして、教えてもらう方がいい。同じ話題でも知らなかったことや、自分と違った切り口を知ることができ、知見が深まるというものだ。


 そもそも、世の中に「教え好き」は多い。教えることには優越感を感じるものだ。うまく合いの手(質問)を入れてあげれば、話もはずむ。せっかく会って話をするのなら「知ったかぶり」でその場限りの優越感を得るより、「知らないかぶり」でより深い人の知見に触れる方がずっと価値が高いのではないだろうか。


★8:同じ失敗を繰り返さない


 よく混同されるのだが、ロジック(論理)に自信を持つことと、頑固であることとは違う。また、ロジックはセオリー(理論)とも区別しなければならない。


 セオリーは、対象となる事象の原因と結果の関係を合理的に説明することで、最大の特徴は、複雑な現実の世界を単純化できる点にある。一方、ロジックとは、思考のつながり、推理の仕方や論証のつながりのことを指す。つまり「論理的に話す」というのは、「つながりや論証を的確に話す」ということだ。結論を導くために使われる情報に修正があれば、結論も修正されるべきだし、それでも結論が一緒ということは、実はロジックが変化しているということに気づかなければならない。


 ここで言いたいのは、結論に至るまでのプロセスを構築することが「勉強」だということ。仕事の現場でも、結果ありきで、原因やプロセスを後付けで解釈するセオリー的思考だけでは、ヒズミが生じて失敗する。時間を有効に使うには、同じ失敗を繰り返さないこと。そのためには既に起こった過去を分析してそこから学ぶこと。それも大切な勉強となる。


★9:「4つのスイッチ」を使い分けて脳に弾みをつける


 薬学者の立場から脳を研究している東京大学大学院薬学系研究科准教授の池谷裕二氏によると、もともと脳は飽きっぽいらしい。文字どおり「三日坊主」が脳の特質なのだという。これを解決するためには「脳をだます」しかないそうだ。


 その1つのポイントが、「淡蒼球(たんそうきゅう)」という脳部位だと言う。淡蒼球は「やる気」や「気合」など日常生活で大切な基礎的なパワーを生み出すといわれているが、自分の意思で淡蒼球を働かせることはできない。ところが「4つのスイッチ」を使えば、淡蒼球を起動させることが可能だというのだ。


 1つ目のスイッチは「Body(身体)」でカラダを動かすこと、2つ目は「Experience(経験)」でいつもと違うことをすること、3つ目は「Reward(報酬)」で文字通りご褒美を与えること、そして4つ目は「Ideomotion(観念運動)」で「なりきる」ことだという。


 脳の情報処理というのはパラレルに行われる。常にモチベーションを維持できている人は、この4つのスイッチを無意識のうち巧みに使い分け、趣味や人との交流などを通じて、仕事や勉強にも「弾み」をつけているのだそうだ。


★10:振り返りのための時間を確保する


 勉強する際、その実行に必要なのは、自分をマネジメントする仕組みだ。それには、やることを詰め込みすぎないこと。計画表は「やりたいことリスト」ではない。作業ごとに必要な時間を見積もって実行可能な計画が書かれていなければならない。


 ときには、実行を妨げる壁が立ちふさがることもある。その場合は、やることが具体的でないために計画倒れになっていたり、計画自体が間違っていることもありえる。そんなとき、完璧主義はこの際忘れて、計画を修正すればいい。そのためには、突っ走るだけでなく、振り返りのために時間を確保することが肝心だ。


 勉強で辛い時は、力んで、意固地に、頑固に「がんばる」だけでなく、ときには自分を解放し、肩の力を抜いてみる。それから、原点に立ち戻り、知りたい気持ちを思い出そう。そして1日10分でもいいから、途中であきらめずに勉強を続けることだ。「時間がない」を言い訳にはしないでおこう。