食品・小売り、野菜を自社生産 安全と安定調達両立 ニチレイは中国で冷凍野菜(日本経済新聞)

日本経済新聞 2010/10/4
http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819594E2E6E2E2E58DE2E6E3E2E0E2E3E29F9FE2E2E2E2

食品メーカーや小売り大手が野菜の安全確保の取り組みを強化する。冷凍食品最大手のニチレイは国内向け冷凍野菜をアジアで自社生産する。第1弾として来秋に合弁工場を中国山東省に稼働させ、現地で収穫した野菜の管理から主導して安全を確保する。セブン&アイ・ホールディングスなども農業法人の設立など体制整備を急ぐ。生鮮野菜は天候に価格が左右されやすいため、ニチレイは割安感がある冷凍野菜で攻勢をかけ、小売りや外食は自社生産で安定調達を目指す。


ニチレイは冷凍野菜の最大手で、年間売上高は約180億円。商品の大半を中国、タイなどの協力工場から調達しているが、今後は自前で投資して生産拠点を整備、原料野菜の栽培農家に指導員も派遣する。


中国の合弁は年末、泰安市に設立。台湾の中堅食品メーカーが70%、ニチレイグループが30%を出資する。工場を新設し周辺で育てたホウレンソウやニンジンを冷凍して日本に輸出する。年30億円の出荷を見込む。数年内に同様の合弁工場を中国や東南アジアに複数設ける計画だ。


冷凍野菜は国内消費の大半が海外産で、輸入品の国内市場はピークの2007年に1259億円と03年比35%伸びた。だが08年に日本たばこ産業グループの冷凍ギョーザ、ニチレイグループの冷凍インゲンと中国産の中毒事件が相次ぎ、09年に市場は1000億円強まで落ち込んだ。ニチレイは生産体制見直しで消費者の安全・安心志向に応えた商品づくりを強化。パッケージに自社工場で生産し安全管理している点を表記することも検討している。


ニチレイが冷凍野菜の自社生産に踏み切るのは価格が不安定な生鮮野菜の代替として、需要回復の兆しも出ているため。生鮮野菜は猛暑の影響で高値が続き、東京・大田市場の9月第5週(24〜30日)の卸価格はニンジンが前年同期に比べ3割高く、ホウレンソウは2倍の水準。天候不順が続けば野菜高騰は続くとの見方が多い。


セブン&アイ傘下のイトーヨーカ堂は1日、全国で3カ所目となる農業事業会社を神奈川県横須賀市に設立。ダイコンやキャベツを生産し、県内の店舗で販売する。コンビニエンスストアのローソンは現在1カ所の農業生産法人を12年度末までに全国10カ所に増やす方針を決めている。


外食業界でも吉野家ホールディングスが神奈川県内に設立した農業生産法人でタマネギや白菜などの栽培試験を開始。11年から収穫した野菜を本格的に店舗で使用する。居酒屋大手のワタミファミリーレストランサイゼリヤがすでに自社農地で野菜を生産している。